校長日誌
6/1 朝礼・校長講話「あなたの脳は、あなたをだましている」
【昇降口下の紫陽花】
今日は6月朝礼
みずみずしい新緑に包まれた5月が颯爽と過ぎていきました
校内の紫陽花がきれいに色づいています
校長講話は、「あなたの脳は、あなたをだましている」
私たちは、ときとして不合理な選択をしてしまうことがわかっています
生徒の皆さんには、自分の頭とうまく付き合って、勉強もうまくなって欲しい!
参考図書は、ダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?」ハヤカワ
みなさん、おはようございます。
突然ですが、問題です。よく聞いてください。よいですか。では、
Q バットとボールを合わせると1100円です。バットはボールより1000円高い。ボールはいくらでしょう?
頭の中に、すぐ「100円」という答えが浮かんだ人はいますか?
実は、正解は 50円 です。
「100円」と答えた人、安心してください。ハーバード大学の学生でも半数以上が同じ間違いをしました。これは頭が悪いのではありません。脳の仕組みそのものの話です。
●システム1とシステム2
今日は、この本、認知心理学者のダニエル・カーネマンによる「ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?」をもとにお話しします。とても面白いので、オススメです。ダニエル・カーネマンは、専門は意思決定論、行動経済学、2002年にノーベル経済学賞を受賞しています。
このダニエル・カーネマンは、私たちの思考には2つのシステムがあると言いました。
一つは 「システム1」―― ファスト思考。速い思考
瞬時に、自動的に、ほとんど無意識に働きます。
例えば、「1+1は?」「朝のSHRで担任の顔を見て、機嫌悪そうだな、危険を感じる」、そういった判断です。エネルギーをほとんど使いません。そして、私たちの日常の選択の大半は、実はこのシステム1が行っています。
もう一つは 「システム2」―― スロー思考。遅い思考。
論理的に、じっくりと、意識的に考えます。
複雑な計算、慎重な判断、新しい概念の理解。これがシステム2の仕事です。しかし、疲れる。時間がかかる。だから脳はできるだけこれを使いたがらない。
先ほどのボールの問題で「100円」と答えてしまったのは、システム1(速い思考)が「1100円と1000円から100円っぽい」と瞬時に結論を出し、システム2(遅い思考)がそれを検証しなかったからです。
●私たちが気づかずにハマっている「罠」
カーネマンはシステム1が引き起こす、いくつかのバイアス(思考の歪み)を明らかにしました。みなさんの学習にも、深く関わるものを三つ紹介します。
① 「わかった気」になる罠 ―流暢性の錯覚
教科書を読んでいて、「あ、わかった」と感じたことはありますか? でも、いざテストで問われると書けない。
これは、読むことと理解することを、脳が混同するからです。文字がスラスラ読める=内容が理解できた、とシステム1が誤解する。本当の理解かどうかを確かめるには、本を閉じて自分の言葉で説明してみるしかありません。「人に教えられるか」が、本物の理解の基準です。
② 「最初の印象」に引きずられる罠 ―アンカリング
模試で偏差値55を取った。「自分は55くらいの人間だ」と、その数字が頭に刻まれる。次に50を取ると「やっぱり自分はこの程度か」と落ち込む。
これがアンカリングです。最初に与えられた数字や情報が「錨(いかり)」となり、その後の判断を縛る。一度の点数があなたの可能性の天井ではありません。数字はあなたの現在地であって、あなた自身ではない。行きたい大学を目指せ!
③ 「努力しているから成長しているはず」という罠 ―確証バイアス
一生懸命勉強している。だから実力はついているはずだ―そう信じたい気持ちは自然です。しかしシステム1は、自分の信念を支持する情報ばかりを集め、反する情報を無視しようとします。
自分の信念を支持する情報といえば、AIの回答は質問した人に肯定的な回答を返してくる傾向がありますね。AIに相談するときは、確証バイアスに要注意です。
「なんとなくわかった」で終わっている演習、答え合わせで○をつけただけの問題。それは本当に身についていますか? 自分への問いかけが必要です。
では、どうすればいいのか
カーネマンのメッセージは「システム1を信じるな」ではありません。
システム1は私たちが生きていくために不可欠な、素晴らしい能力です。
彼の主張は、
「重要な場面で、立ち止まれ」
ということです。
学習の場面でいえば、こういうことです。
| システム1に任せてしまいがちな場面 | システム2を意識的に動かす習慣 |
| 「読んでわかった気になる」 | 本を閉じて、白紙に書き出す |
| 「解説を見てわかった気になる」 | 翌日、何も見ずに再挑戦する |
| 「なんとなくこの答えっぽい」 | 「なぜそうなるか」を言語化する |
| 「自分はこの程度の人間だ」 | 「今日の自分は昨日より何が変わったか」を問う |
こういうことは、いつも先生から言われていることですね。
●最後に
みなさんは今、「考える力」そのものを鍛える場所にいます。
システム1の「なんとなく」に気づき、システム2の「待てよ、本当にそうか?」を発動させる。その習慣こそが、難問を解く力であり、受験という選択を超えて、これからの人生で本物の判断力になります。
「速く答えを出せる人」より、「立ち止まれる人」が、長い目で見て賢い。
脳は、楽をしたがります。でも、あなたはその脳の主人公です。
今日から勉強するとき、「これは本当にわかっているか?」と、一度立ち止まってみてください。
その一瞬の問いかけが、あなたの思考を、確実に変えていきます。
思考の論理エンジンを磨いていこう!
(参考:ダニエル・カーネマン著『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』村井章子訳、早川書房)
4/22 SSH開講式(挨拶)
1年生SSH開講式を開催しました。
知的好奇心を源泉とした「勉強をもっと楽しみたい」生徒たちのわくわく感
が伝わってきました。
私からの挨拶です。
こんには、SSH開講式にあたり、お話します。
1年生の皆さん、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)の世界へようこそ。
一女にきたら、SSHに取り組んでみたいと思っていましたか!?
それは、素晴らしいですね。きっと、「勉強をもっと楽しみたい!」というみんなの思いがあることでしょう。
今日から始まるこのプログラムは、今まで知っていたと思うことや未知のことに対して、新たな視点を獲得する「知のフロンティア」への入り口です。
それでは、これから3つ話します。
1. 知的好奇心こそ、最高の贅沢である
「なぜだろう」「どうしてこうなるのか」という疑問を抱き、その答えを探究する。この知的好奇心は、人間だけに与えられた最も贅沢な「知的営み」であり、何物にも代えがたい「楽しみ」です。
未知の事柄に出会ったとき、「難しい」と身構えるのではなく、「面白い!」と目を輝かせる。そんな知的なワクワク感を、このSSHの活動の中で存分に味わってください。
2. 「面白がること」の才能を磨く
研究には、壁がつきものです。再現実験をしてもうまくいかなかったり、予想外の結果が出たり、仮説が外れたりすることもあるでしょう。しかし、そんな時こそ「さて、ここからが面白くなってきたぞ」と笑える強さを持ってください。何事も「面白がって取り組む」姿勢は、創造性を生む最大のエンジンです。楽しんで取り組んでいる人には、誰も適(かな)いません。
3. SSHは「教科書の学び」を加速させる
「SSHの研究と、普段の授業の勉強は別物だ」と考える人がいるかもしれません。しかし、それは違いますね。SSHで探究の深さを知れば、普段、無機質に見えていた「教科書の一行」が、科学者たちの情熱や歴史の積み重ねに見えてくるはずです。研究で得た視点は、必ず皆さんの学習をより深く、より楽しいものへと変えてくれます。
おわりに
今日は3つ話しました。「知的好奇心こそ、最高の贅沢」「面白がることの才能を磨け」「SSHは「教科書の学び」を加速させる」
これらSSHの活動は一人では成し遂げられません。共に議論し、時には対立し、支え合って一つの課題に挑む仲間を大切にしてください。ここで結ばれた絆は、同じ志を持つ一生の宝物になります。互いの個性を尊重し、高め合える集団であってください。
皆さんの探究心が、新しい未来、新しい自分を切り拓く力になると信じています。みなさんの瑞々しい感性で、この世界を遊び尽くそう! 頑張れ!
4/18 PTA総務委員会(保健委員会による生徒プレゼン)
PTA総務委員会が開催されました。
ご出席いただいたPTA、後援会の皆様、渉外部の先生方ありがとうございました。
総会にむけてR7,R8について報告、検討をいただきました。
また、会の冒頭にお時間をいただき、生徒によるプレゼンがありました
このプレゼンは、保健委員会が実施してきた「MOON SHAREプロジェクト」事業についてです。
事業実施の持続性のために、予算面での話もありました。
事業内容、2名の発表生徒共に立派でした
「MOON SHAREプロジェクト」の概要は、保健委員会が発行している以下のHealth journal 4月号をご覧ください。
4/18 第1回塾向け説明会(挨拶)
第1回塾の先生方向け説明会を開催しました。
多数の皆様にご来校いただきました。
ありがとうございます。
全体説明後、授業参観などの校内見学もしていただきました。
本校でご覧いただいたことを塾の生徒や保護者の皆さまにお伝えください。
会の冒頭に私から挨拶をさせていただきました。
皆さま、こんにちは、校長の山﨑です。
本日は、本校の説明会にお越しいただき、誠にありがとうございます。
今年度、新入生を迎えて無事、新年度を始めることができました。
中学生の受検においては、塾の先生方に応援していただいたことが多分にあります。
昨年度は2回、11月15日と、年明けの1月10日に、塾の先生方向けの説明会を開催させていただきました。先生方には重ねてお越しいただきました。本校の説明会でのことを塾生のみなさんにお話いただいたり、ご自身の塾のホームページで発信していただたりしています。
そして、梅野さん、ノグジュンさんに、度々お越しいただき動画での発信をしていただいております。
皆様に、感謝申し上げます。
本校生徒や保護者のかたに、一女にきたのはどうしてか?と聞くと、塾の先生に推されて、という方が結構います。本校入学のきっかけになっていますし、生徒本人の人生にも大きな影響を与えています。
さて、今年の中3生から入試が変わります。
マークシート方式のことや、国語の作文がなくなることなど学力検査に関することで変更になることや、傾斜配点が各校によってことなっていること、全ての高校で面接をするということなど、あげていくと結構ありますね。
私は、入試は、選抜をするためのものであると同時に、中学生へのメッセージを含んでいると考えています。
これは、今回の話しではありませんが、5教科に関していえば、例えば、「説明しなさい」という問題が、あるときから出題されるようになりました。答えが出たかでなく、どうしてその答えになるのか意味がわかっているのかを求めていて、答えがでればよいという勉強ではなく、意味理解を伴う深い理解をしてきて欲しいというメッセージでした。
今回、すべての学校で面接をすることになりました。調査書のレイアウトが変わったので面接でアピールということもあります。
面接は、自分のことをこたえなければなりません。これは、すべての受験生にいえることですが、どうしてその学校に入りたいのか、入学して何をやりたいのか、高校での学びを通して将来はどうしたいのか、つまり「自分は何者か」を問うて欲しいということだと思っています。
「自分は何者か」「社会でどう生きたいか」を問い続けることは、学びの質を劇的に変えていきます。高校、大学と進み学ぶことが増えれば、思わぬことに出会って考えも変わって当然だと思います。
受験勉強まっしぐらで、精一杯頑張ってきた中学生は、大歓迎ですが、面接があるからこそ、「なぜ、一女を受けたのか」「たった一度の人生をどう生きるのか、何を実現したいか」立ち止まって問いを立ててみることは大事なことだと考えています。
塾の先生に劇推しされて一女へ入学する生徒の皆さんに、是非一度考えて欲しいことです。
このあと、教頭から本校のことについて、入試について説明をさせていただきます。説明後には授業参観等、校内を見学ください。
なお、次回、第2回の塾の先生向け説明会は、6月27日(土)を予定しています。中学生やその保護者向けの第1回説明会は6月13日(土)に開催していますので、説明会でお伝えしている内容や、受検勉強を進める中学生や保護者の皆さまから質問などがあれば、お答えしたり共有できればと思っています。
4/13 学校案内(校長挨拶)
正門の桜が緑美しくなりました。
青空と新緑のコントラストが素敵
さて、今年度版の中学生向け「学校案内」を制作中です。
小学生の皆さんも是非ご覧ください。
学校案内の校長挨拶をお伝えします。
中学生の皆さんへ
世界は今、かつてないスピードで動いています。グローバル化が加速し、AIが社会を塗り替えていく時代に求められるのは、「変化を恐れず、自ら未来を切り拓く力」ではないでしょうか。
浦和一女が目指すのは、知性と教養、そして逞しさを兼ね備え、世界を舞台に社会へ貢献できるリーダーの育成です。
本校の学びは、教室の中だけにとどまりません。生徒同士が本気でぶつかり合う白熱した授業、心とからだを磨き生涯の友情を育む部活動、全力で仲間と一つのゴールへ向かう学校行事——こうした日々の積み重ねが、皆さんの可能性を最大限に引き出します。
また、SSH、SGHで積み上げた実績を礎に、全校で「探究学習」にも取り組んでいます。自分の問いを深め、答えを出す力は、どんな時代にも通用する本物の学力です。
英国・台湾の姉妹校との交流をはじめ、多彩な国際交流の機会も皆さんを待っています。世界へ視野を広げ、多様な価値観に触れることで、「自分にしかできないこと」が見えてくるはずです。
浦和一女での3年間は、きっと生涯の宝物になります。
ここで、あなたの物語を始めましょう!
4/8 対面式
生徒会の皆さん、本日の対面式の開催ありがとうございました。
心のこもった素敵な「あひるバッチ」と「手引き書」です!
緊張していた1年生が、先輩と話をする中で笑顔になっていましたね
対面式にあたり、ひとこと...
2,3年生の皆さん、1年生を歓迎する側、対面式は歓迎式です。
先輩の皆さんには、是非、1年生を育ててほしい。
育てるといっても、手取り足取りで、指導しろというわけではなく、頑張っている先輩の姿、背中を後輩の1年生に見せてほしい。
1年生は、その先輩の姿をみて学び、成長します。
また、1年生の皆さん、入学おめでとう! 入学式から3日目。
新しい環境でつかれていませんか? 今日、先輩と顔を合わせて、今日からが高校生活のスタートですね。
さて、本校は、120年を超える伝統校です。
皆さんが生まれる前から、先輩が引き継いだものがあるからこそ、ここで学ぶことができます。その伝統に感謝。
ところで、伝統とは。
伝統は、老舗の鰻屋さんが大事にする「たれ」に例えられます。「たれ」は使った分だけ新しく注ぎ足し、それはやがて馴染んでその店の味となります。
学校も3年生が卒業して、新入生が入ってきます。新入生は、この「手引き書」で一女のお作法を学び、その都度、一女を形作ります。
ここで、大事なのは、伝統といわれるものは、常に新しい存在が求められるということです。
そして生徒会はいい塩梅に様々な学校行事を企画・運営して、一女の伝統を支える存在です。
2、3年生は、1年生が入ってきたからこそ、いままで以上に、学校を面白くできるし、あとを託せる。
1年生は、早く一女生になれ。
4/81学期始業式・校長講話「共生社会」
桜花爛漫、桜の花びら舞う佳き日
令和8年度 着任式・1学期始業式を迎えることができました!
高い志をもった魅力あるリーダーに成長して欲しい生徒の皆さんには、自分たちが生きていく「共生社会」のことを知って欲しい
校長講話は、「共生社会」について
1. 新たな出会いを「必然」に変える
皆さん、改めましておはようございます。先ほど着任式を終え、一女(いちじょ)に新しい風が吹き込みました。
一方で、慣れ親しんだ先生方との別れに寂しさを感じている人もいるでしょう。しかし、そう思えること自体が、皆さんがその先生と「最高の出会い」を経験した証拠でもあります。
高校時代の出会いは、時に人生の航路を大きく変える力を持っています。私自身の経験を振り返っても、高校で出会った友人や恩師の「自分とは全く違う面白い考え方」に触れた刺激が、後々(のちのち)の自分を形作っています。
この一女に集まった皆さんは、偶然の集まりではありません。「ここで学びたい」という強い意志と目的を共有して集まった仲間です。この「偶然の出会い」を、切磋琢磨し合う「必然の出会い」へと高めていってください。周りの仲間の興味関心に触れ、自分の世界をどんどん広げてほしいと思います。
2. 「合理的配慮」の先にある「共生社会」
さて、今日は社会の動きについて二つお話しします。一つ目は、2年前の4月から義務化された「合理的配慮」についてです。
この合理的配慮は、障害の有無や年齢、性別に関わらず、誰もが尊厳を持って生き生きと暮らせる「共生社会」を目指し、不当な差別を禁じ、必要な助けを届けようという仕組みです。車いすの方の入店を断らない、必要な情報の受け取り方を工夫するといったことは、今や社会の「義務」であり、皆さんが社会に出る頃には「当たり前のマナー」になっているべきものです。最近は身近に見たり、聴いたりするようになりました。皆さんの身近なことでは、入試における合理的配慮がありますね。
しかし、私は皆さんに一歩先を考えてほしいのです。誰かが困っているときに手を差し伸べる。それは本来、法律で決められる前から、私たちが人として大切にしてきた温かな「配慮」そのものではないか、ということです。
3. 「女性活躍」から「自分らしい生き方」へ
二つ目は、今の話に深く関わる「改正女性活躍推進法」についてです。
現在、社会では女性の職業生活における活躍を推進するため、企業に対して情報の公表や行動計画の策定が強く求められています。これは単に「女性の管理職を増やす」という数字だけの問題ではありません。
性別による固定観念を打ち破り、誰もが能力を最大限に発揮できる環境を整えること。
これもまた、先ほどお話しした「共生社会」の重要なひとつの項目です。
将来、リーダーとして社会を牽引していく皆さんにとって、この法律の変化は追い風です。しかし、制度があるから活躍するのではなく、皆さん自身が「どう生きたいか」を主体的に描き、道を切り拓いていくことが何より大切です。
4. 結びに:後輩たちの道標として
この後、対面式が行われます。新入生は、皆さんの背中を見て一女生活をスタートさせます。
目標に向かって真っすぐに突き進む先輩の姿は、何よりも雄弁なメッセージとなります。同時に、不安を感じている後輩にそっと声をかけるような「配慮」のできる先輩であってください。
その小さな行動の一つひとつが、この「一女」を、そして未来の日本を、より良い「共生社会」へと変えていく原動力になります。
それでは、令和8年度を始めましょう。
素晴らしい一年にしていきましょう!
4/6 入学式・式辞
桜花爛漫の中、期待を胸に新入生357名が入学しました
入学にあたり式辞を送りました。
寒さと暖かさが交互に行き交いながらも、命芽吹く春が巡ってまいりました。校庭の桜が、新たな門出を祝福するかのように、きらきらと光り舞う今日の佳き日。
PTA副会長 長坂 兼一(ながさか けんいち)様
後援会会長 田口 麻沙美(たぐち まさみ)様
麗風会会長 栗原 美恵子(くりはら みえこ)様
本校学校評議員 山口 善子(やまぐち よしこ)様
公私共にご多忙の中、ご臨席を賜りましたことに厚く御礼申し上げます。
ただ今、入学を許可いたしました三百五十七名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。
難関を突破し、高い志を持ってこの「一女」の門をくぐった皆さんを、教職員・在校生一同、心から歓迎いたします。また、これまで慈しみ育ててこられた保護者の皆様、お子様のご入学、誠におめでとうございます。
本校は明治三十三年の創立以来、百二十年を超える歴史を刻んできた、全国屈指の伝統を誇る女子高校です。社会が激しく変化する中にあっても、私たちは変わることなく、次代の日本、そして世界を担う「高い志を持った魅力あるリーダー」を育成することを使命としてまいりました。
各界で活躍する諸先輩方の足跡は本校の誇りですが、今日からは、皆さんがその新しい歴史を創り出す主役なのです。
これからの「一女での一〇〇〇日」が、皆さんの人生を決定づける豊かな時間となるよう、三つのお願いを伝えます。
一つ目は、「自ら考える力」グライダーから飛行機へ
外山滋比古さんの著書『思考の整理学』に、「グライダー人間」と「飛行機人間」の話があります。
グライダーは美しく空を舞いますが、自力で飛ぶことはできず、常に他者に引っ張ってもらう必要があります。一方、飛行機は自らのエンジンを回し、自分の意志で目的地へと飛び立ちます。
これまでの学びは、与えられた問題を解く「グライダー能力」が主だったかもしれません。しかし、正解のない問いに向き合うこれからの時代には、自ら課題を見つけ、エンジンを回して進む「飛行機能力」こそが不可欠です。この三年間で、生涯を支える「思考のエンジン」を鍛え上げてください。
二つめは、「将来の自分」との対話について
経済産業省による「未来人材ビジョン」では、日本の学生の多くが大学の後半になってから進路を考え始めるという結果が出ています。しかし、高校時代という多感な時期に、じっくりと「自分は何者か」「社会でどう生きたいか」を問い続けることは、学びの質を劇的に変ていきます。
一女での新たな友人、先生、そして学問との出会いは、皆さんの可能性を無限に広げるはずです。今持っている固定観念に縛られず、広い視野で「将来の自分」をデザインし始めてください。
三つめは「自律的な安全」と「対話の力」について
高校生活では行動範囲が大きく広がります。通学やSNSの利用、あるいは予期せぬ自然災害など、リスクを予測し、回避する判断力を養ってください。自分の身を守ることは、自律した大人の第一歩です。
同時に、一人で抱え込まないでください。悩みや不安が生じたときは、周りの友人や大人に言葉を尽くして相談してください。対話こそが、困難を乗り越えるときに大事となります。
保護者の皆様、学校教育は、学校・家庭・地域が手を取り合ってこそ、その真価を発揮いたします。私たち教職員は、大切なお子様を全力で導いてまいる所存です。どうぞ本校の教育方針へのご理解と、温かな励ましをお願い申し上げます。
結びに、本日ご臨席いただきました皆様に改めて感謝申し上げますとともに、新入生の皆さんが「一女」での日々を、たくましく、しなやかに、そして悔いなく駆け抜けることを心より祈念し、式辞といたします。
令和八年四月六日
埼玉県立浦和第一女子高等学校長
山﨑正義
令和8年度スタート!
令和8年度がスタートします
校内の桜がとてもきれいです
4月6日(月)入学式
ひと足早く新入生をお迎えします
4月8日(水)着任式、始業式、対面式
今年度も引き続き、どうぞよろしくお願いします
令和7年度修了式校長講話「議論の楽しさ」
昇降口下の桜が少しずつ開花。
4月の新入生、新学年生も歓迎して欲しい。
今日は、今年度最終日、修了式となりました。
校長講話は「議論の楽しさ」について話しました。
みなさん、おはようございます。
今日は、1年の最後、修了式です。一区切りをつけて、次のステップに向かうところ。一年をやり遂げた清々しさを感じていますね。そんな皆さんに、今日は「議論することの楽しさ」をお話ししたいと思います。
さて、皆さんに一冊の本を紹介しましょう。大阪大学の研究者たちが真面目に、かつ遊び心を持って議論を尽くした、『ドーナツの穴だけ残して食べる方法』という本です。ここでのドーナツは、輪になった形を思ってください。ミスドには、輪になっていないものもあるけど、ポケモンなどのキャラクターものなど、今回それは除外。
「ドーナツの穴を残して食べるなんて、そんなの物理的に不可能だ」と切り捨ててしまうのは簡単です。しかし、この本に登場する学者たちは違います。数学者は「ドーナツの形(トーラス)」の定義から考え、工学者は「穴を空間としてどう定義し、保存するか」を模索し、美学者は「穴があるからこそドーナツである」という存在論にまで踏み込みます。みなさんが、興味のある分野の先生が書いた部分だけでも読むと面白さがあると思います。
今日は、この「一見無駄に見える問いを議論すること」の価値について、皆さんと共に、3つに分けて考えてみたいと思います。
一つめ、議論とは、世界の「解像度」を上げること
「議論」と聞くと、相手を言い負かすことや、一つの正解を導き出すことだと思っている人はいませんか? もしそうなら、それは大きな誤解です。
この本の面白さは、「一つの問いに対して、多様な視点が交錯する瞬間」にあります。
数学、物理学、歴史学、心理学、法学、哲学……それぞれの専門家が自分の眼鏡でドーナツを見たとき、そこには全く異なる風景が広がります。
議論をすることの真の面白さは、自分一人の視点では決して到達できなかった「新しい視点」を、他者の言葉を通じて手に入れることにあります。自分とは異なる意見に出会ったとき、「それは違う」と拒絶するのではなく、「なぜ、この人にはそう見えるのだろう?」と問いを立てる。その瞬間、皆さんの見ている世界の解像度は劇的に上がるのです。
二つめ. 議論する力をつけるために、今必要なこと
では、本校で学ぶ皆さんが、真の意味で「議論する力」を身につけるためには、何が必要でしょうか。私は二つのことが不可欠だと考えています。
ひとつは、「徹底的な基礎学力」という武器
これは、意外に思いますか。各個人の「知識を深めること」はとても大事です。
ドーナツの議論が成立したのは、参加者がそれぞれの分野でプロフェッショナルだったからです。確かな知識という足場がなければ、議論はただの「感想の言い合い」に終わってしまいます。皆さんが日々向き合っている数学の定義・公式や古文の文法、物理の法則。これらは将来、誰かと対等に議論し、新しい価値を生み出すための「共通言語」であり、皆さんの「武器」なのです。
もうひとつは、「知的誠実さ」という作法
これは、「わからない」を恐れない勇気です。
議論の場で最も恥ずべきは、知ったかぶりをすることや、論破することに固執して相手を敬わないことです。自分の仮説が間違っていたら、それを素直に認め、他者の優れた意見を吸収する。この「知的誠実さ」こそが、議論を建設的なものにします。
三つめ、議論が「学び」をどう変えるのか
最後に、議論することが皆さんのこれからの学びにどう生かされるのかをお話しします。
これからの社会では、AIが瞬時に「もっともらしい答え」を出してくれるようになります。しかし、「問いを立てること」と「納得解を紡ぎ出すこと」は、人間にしかできません。
議論を通じて多角的な視点を持つことは、皆さんの学びを「暗記」から「創造」へと変えます。
みんな自身が友達とすぐにでもできることとして、例えば、物理の法則を学ぶとき、「もし重力がなかったら?」という仮説を友人と議論したり、歴史の出来事に対し、「もし別の選択がなされていたら?」と多角的に検証したり、妄想したりは楽しい。
また、私たちは、うまく解釈できないときに「意味わかんねぇ」とつい言ってしまう。これは、私たちが常に能動的に物事を捉えようとしているということ。この「意味わかんねぇ」ときに、誰かに向かって「ねぇねぇ、これ意味わからんなんだけど」と話せるとよい。聞かれた相手は、「何が意味わかんねぇ」なのか、自分の知識を振り返る。これを「メタ認知」という。この一連のやりとりは、みんなの知識が能動的、つまりアクティブに働く瞬間、アクティブラーニングともいう。これは、わからなさをめぐるちょっとした議論だ。「意味わかんねぇ」は貴重な機会。ひとりの「意味わかんねぇ」は、そのわからなさの追求でちょっとした議論だ。このとき、質問した方と、質問された方はどちらが学びが大きいか? 質問した方は解決すれば、何よりだが、質問された方は、自分の知識がより深くなるので学びの価値は数倍大きい。人に説明したり、教えたりは自分の勉強にとって何より大事な機会だ。
春休みは、自宅で一人ということもある。誰か相手がいなかったら、生成AIでもよい。よくわからないことや問題があったら、それを写メって、AIにくわせて、「これ意味わからないのですが、中学生にもわかるように説明してください」と対話してみよう。このとき最初のところで、「あなたは、優秀な高校の数学の先生です」とか、AIの役割を定義してあげると回答の精度があがる。また、丁寧な言葉で語りかけると、AIも丁寧にかえしてくれる。
こうしたプロセスを経た知識は、一生忘れることのない、あなた自身のものとなります。一人で机に向かう時間は大切です。しかし、その孤独な思考を他者にぶつけ、揉まれることで、学びは初めて深まりをもち、社会とつながり、輝きを放つのです。
おわりに、皆さんは、この春休みという時間を使って、「よくわからん」も含めた多くの「問い」に出会ってください。そして、それを友人と、家族と、AIと、あるいは自分自身と対話や議論に繋げてみてください。
「ドーナツの穴」を真剣に論じる大人たちがいるように、皆さんも「正解のない問い」を愛せる人になってほしいと願っています。
一年間、よく頑張りました。4月、また一回り大きく成長した皆さんと、再会できることを楽しみにしています。