ガラスの天井を打ち破る ~PTA進路研修会での校長挨拶から②~

 女性活躍の時代、と言われておりますが、一方で「ガラスの天井」などという言葉もあります。本校生徒の皆さんには「ガラスの天井」を打ち破り、大いに社会に貢献して活躍する人になっていただきたいと思います。

 ところで、「インポスター症候群 impostor syndrome」という言葉はご存じですか。

 インポスター症候群とは、確かな実力を持ち成果を上げているにも関わらず、自身の能力や実績を認められない、自己評価がひどく低い状態を指します。上司に「よくやってくれたね。」と声をかけられても「たまたま運が良かっただけ」「周囲のサポートがあったから」「私が担当しなければもっと良い結果が得られたはず」など、どんどん悪いほうへ考えてしまうのです。インポスター症候群は正式な病気ではなく、心理傾向や気質であるということです。しかし、人によってはネガティブな心理傾向が大きな負担となるケースもあるそうです。

 もともと日本人には「謙遜」とか「謙譲の美徳」といった言葉があるように、奥ゆかしさや寡黙さを評価する土壌があるのは確かです。しかし、本当は実力があるのに、失敗や批判を恐れチャレンジしない・できない、自信が持てない、自分を過小評価するといった傾向が強まり、他人から良い評価を受けると重荷に感じたり、不安に思ったりしてしまうのは問題です。

 こうした状況に陥る要因には、心理的要因と文化的要因があるそうです。

 心理的要因とは、負の経験から心に残った傷です。「出る杭は打たれる」のようないじめや仲間外れ、妬み、からかいなどが心に大きな負担を残すのです。

 文化的要因とは、例えば「女性は女性らしく、家庭的で控え目に」という価値観の人が多い環境で育った、「個性」よりも「同調」が求められ、ほかの人と同じように振る舞うよう教育されてきた、自分自身の成功よりも周囲や組織全体の成功を優先するよう教育されてきた、等の成長過程における環境の影響が大きいそうです。

 インポスター症候群に陥る人の心理的背景には、無意識に「自分は変化してはいけない(=成長してはいけない)」と思い込んでしまう、ということがあるそうです。おとなしく大人の言うとおり、一見問題なく育っているようなお子様の中に、実はインポスター症候群予備軍はいないだろうか、と心配しております。

 では、インポスター症候群をうまく克服するためにはどうしたらよいか、5つのポイントをご紹介します。

 1 目の前のことに集中して取り組む

 2 自分にも他人にも寛容に対応する

 3 褒められたら素直に受け止める

 4 どんなに小さな成功でも自分をしっかり褒める

 5 優秀な仲間の中に身を置く

いかがでしょう。よく考えてみると一女の学習環境は、この5つのポイントをしっかり押さえているのではないでしょうか。

 私は一女ならではの教育のあり方が、お子様方にとって最良の学習環境を構築していると自負しております。

 本日はPTAの進路研修会ということで、この後、進路担当と各教科から詳しく説明がございます。学校と御家庭とが同じベクトルでお子様の成長を支えていくことは大変重要なことと考えております。本日はどうぞよろしくお願いいたします。