一女の探究学習について ~麗風会総会でのご挨拶から~

 

 私たちが生きている社会は想像を超えるスピードで変化しています。人口減少や超高齢化、不透明な経済状況、環境保全やエネルギーの確保、いつまでも終息の見えない海外の戦争・紛争など、これまで人類が経験してこなかったような様々な課題が山積しています。

 このような時代をたくましく生き抜くためには、これまでのような与えられた知識を一生懸命覚えてテストの時に効率よく書き出す、というような教育だけでは足りない、ということです。高校時代に、柔軟な発想でみんなで知恵を出し合い、協力し合って困難な課題の解決に取り組めるような土台を築く必要があります。

 また、課題そのものについても、与えられた課題に取り組むのではなくて、自分から探し出して問いを立て、解決していくような学習が必要です。これからの時代を生き抜くための本物の力を磨く必要がある、ということです。

 令和4年度から、学習指導要領の変更により全国の高校で本格的に探究学習がスタートしました。総合的な学習の時間が、総合的な探究の時間に代わると同時に、地理探究や古典探究のような科目も登場しています。

 一女の探究学習については、実は世の中の動きよりかなり早く、SSHの取組が始まった20年前には探究型学習を取り入れ、全国でも先進的に取り組んでまいりましたが、新しい学習指導要領に基づいた新しい教育課程の変更により、より先進的な取組を積極的に行っているところです。

 先ほど申し上げた、総合的な探究の時間では、全ての生徒が地球的規模の社会的課題、科学的な課題を取り上げ、課題解決に向けた研究を行います。3年間の流れとしては、まず、チェンジメーカーと言って社会に変革を起こした人物、それも女性のチェンジメーカーを取り上げ、その人について徹底的に調べる、というところから始まります。それから数人のグループで自分たちで課題を設定し、年度末までにポスター発表やパワーポイントを用いた研究発表を行っていきます。2年生では未来のSDGsの実現に向けた課題設定と(「持続可能な開発のための2030アジェンダ」としてSDGsが国連総会で採択されたのは2015年。具体的な17のゴール・169のターゲット)、ビジネスモデルの研究の2本柱で研究しています。やはり、年度末までに発表できるようにまとめます。3年生は2年間の研究を踏まえて論文をまとめることになっております。

 さて、この探究型学習でとても大切なことが一つあります。それは、決して机上の空論であってはならない、ということです。研究のために生徒は学校を飛び出して現実の社会を見聞きすることが必要です。また、学校の教員からだけでなく、社会で活躍されている皆様方と触れ合い、直にお話を伺うことで理解を深めていくことが非常に重要です。

  そこで本校ではいろいろな機会を設けております。ここが本校ならではの取組になるわけですが、さまざまなフィールドワークの機会を用意しています。夏休みに行うベトナムフィールドワークはその一つです。希望者を教員が引率して、3泊5日の日程の中で企業や学校を巡り、現地の大学生とも意見交換してまいります。戦争の遺構なども見てまいりますので、まさに世界的規模の社会的課題を考える上で非常に有意義な体験になります。 

 もちろん、国内においても積極的に大学のラボツアー東大、お茶の水女子大、京都大学、東北大学など、また、SSHで糸魚川のフォッサマグナを観察するフィールドワークなど多彩です。ベトナムフィールドワークは3年間実施できませんでしたが、昨年度、今年度も実施の予定です。このほか、海外には、スタンフォード大学に昨年度4名、今年度は5名の生徒がリーダーシップを学びに夏休みに1週間行ってまいります。また、3月にはイギリスの語学研修もできました。今年度も実施できる見込みです。 

 ただ、こういった学校外での学習は、特に泊を伴うもの、遠距離であるものについては生徒の負担がかなり大きくなってしまうことになります。海外であれば尚更です。ただでさえ、円安、物価高騰のおり、それでも生徒、保護者の皆さまは将来に向けてプログラムに参加してくださっています。学校としても業者選びを適切、適正に行っております。 

 これらの活動費の一部は、後援会、そして麗風会さまのご支援無くしてはこの先成り立っていかないものと想像しております。引き続き、皆様のご理解とご支援を賜れれば幸いでございます。