2024年7月の記事一覧
7月全校集会-校長講話から
7月19日の全校集会では、今、埼玉県で話題になっている男女共同参画苦情処理委員からの教育委員会への勧告を受けて、男女共同参画社会についてお話しました。生徒の皆さんにも考えていただく時間を取りました。
講話の中でご紹介した『令和6年度版 男女共同参画白書』(令和6年6月 内閣府男女共同参画局)は、データに基づいて大変興味深い分析結果が掲載されています。講話の中では紹介しきれなかったので、時間のある時、ゆっくり読み解いてみてはいかがでしょうか。
本校の目指す学校像は「世界で活躍できる知性と教養、逞しさを備え、社会に貢献する高い志を持った魅力あるリーダーを育成する女子高校」です。
男女共同参画社会を牽引し、世界の平和を実現する未来のグローバルリーダーを育てるのが本校の使命です。
これからも、男女共同参画社会の実現に向けてしっかりと学んでいきましょう。
ガラスの天井を打ち破る ~PTA進路研修会での校長挨拶から②~
女性活躍の時代、と言われておりますが、一方で「ガラスの天井」などという言葉もあります。本校生徒の皆さんには「ガラスの天井」を打ち破り、大いに社会に貢献して活躍する人になっていただきたいと思います。
ところで、「インポスター症候群 impostor syndrome」という言葉はご存じですか。
インポスター症候群とは、確かな実力を持ち成果を上げているにも関わらず、自身の能力や実績を認められない、自己評価がひどく低い状態を指します。上司に「よくやってくれたね。」と声をかけられても「たまたま運が良かっただけ」「周囲のサポートがあったから」「私が担当しなければもっと良い結果が得られたはず」など、どんどん悪いほうへ考えてしまうのです。インポスター症候群は正式な病気ではなく、心理傾向や気質であるということです。しかし、人によってはネガティブな心理傾向が大きな負担となるケースもあるそうです。
もともと日本人には「謙遜」とか「謙譲の美徳」といった言葉があるように、奥ゆかしさや寡黙さを評価する土壌があるのは確かです。しかし、本当は実力があるのに、失敗や批判を恐れチャレンジしない・できない、自信が持てない、自分を過小評価するといった傾向が強まり、他人から良い評価を受けると重荷に感じたり、不安に思ったりしてしまうのは問題です。
こうした状況に陥る要因には、心理的要因と文化的要因があるそうです。
心理的要因とは、負の経験から心に残った傷です。「出る杭は打たれる」のようないじめや仲間外れ、妬み、からかいなどが心に大きな負担を残すのです。
文化的要因とは、例えば「女性は女性らしく、家庭的で控え目に」という価値観の人が多い環境で育った、「個性」よりも「同調」が求められ、ほかの人と同じように振る舞うよう教育されてきた、自分自身の成功よりも周囲や組織全体の成功を優先するよう教育されてきた、等の成長過程における環境の影響が大きいそうです。
インポスター症候群に陥る人の心理的背景には、無意識に「自分は変化してはいけない(=成長してはいけない)」と思い込んでしまう、ということがあるそうです。おとなしく大人の言うとおり、一見問題なく育っているようなお子様の中に、実はインポスター症候群予備軍はいないだろうか、と心配しております。
では、インポスター症候群をうまく克服するためにはどうしたらよいか、5つのポイントをご紹介します。
1 目の前のことに集中して取り組む
2 自分にも他人にも寛容に対応する
3 褒められたら素直に受け止める
4 どんなに小さな成功でも自分をしっかり褒める
5 優秀な仲間の中に身を置く
いかがでしょう。よく考えてみると一女の学習環境は、この5つのポイントをしっかり押さえているのではないでしょうか。
私は一女ならではの教育のあり方が、お子様方にとって最良の学習環境を構築していると自負しております。
本日はPTAの進路研修会ということで、この後、進路担当と各教科から詳しく説明がございます。学校と御家庭とが同じベクトルでお子様の成長を支えていくことは大変重要なことと考えております。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
『論語と算盤』 ~PTA進路研修会での校長挨拶から①~
7 月3日から新紙幣が発行されます。1 万円札の顔は渋沢栄一。3年前に大河ドラマを楽しまれた方も多いでしょう。私もその一人です。当時は人物についていろいろ知りたく思い、著作物もいろいろ読みました。その中でも私のお勧めは『論語と算盤』です。学校の図書館に、ちくま新書版があります。
実は今朝(6月29日)の新聞に、前日本代表チーム監督・日本ハムファイターズCBO(チーフベースボールオフィサー)の栗山英樹氏が監督時代、大谷翔平選手をはじめとする若手選手にこの本を渡して読むことを勧めていた、というコラムがあって、大変うれしく思いました。
渋沢栄一の本は経営者や起業家が読むもの、と思われる方は多いかもしれませんが、実は困難な時代を生き抜くための先人の知恵や理想のリーダー像など、現代的な課題を解決するヒントのようなものがたくさん詰まっている、と私は思っているのです。
特に今日お話したいのは、渋沢栄一の高い志と、二つの対極にあるものを両立させる力です。
ドラマで若き日の渋沢栄一は、何か方向性が定まらず、バタバタしている印象がありました。熱心に倒幕運動に参加したかと思えばいつの間にか一橋慶喜に重用されている。しかし、高い志はあった。それは日本を強く豊かな国にするということです。倒幕も攘夷もそれは目的ではなくて高い志を実現するための一つの手段であった。高い志があったからこそ、柔軟に、したたかに幕末の混乱期を生き抜いたともいえるでしょう。
また、経済と道徳、公益と私益、競争と協調といった、二つの相反する価値観を両立させた実力は見事なものです。時に厳しく、時にすべてを包容し、日本の経済の仕組みを次々に新しくしていきます。ここにも強い信念と柔軟性、発想力、そして周囲を巻き込むリーダーシップとすべてを併せ吞む人間力を感じます。
思えば若き日の渋沢栄一は論語をしっかりと学び、家業の商売にも全力で取り組み、一橋家に仕えた時には広い世界を相手にするためにパリ万博にも赴きました。
強く、しなやかな渋沢栄一の生き様から私たちが学ぶことは多いと思います。