2025年3月の記事一覧
第76回卒業証書授与式 校長式辞より
九名の卒業生の皆さん、御卒業おめでとうございます。
皆さんは、一女に入学以来四年間、夕方の時間に登校し夜遅くまで勉強や学校行事、部活動などに一生懸命取り組んできました。特に冬の季節は、真っ暗な中を北風にさらされながら登下校していました。本当によくがんばりました。
様々な困難を抱えながら夜間定時制高校を卒業するということは、想像以上に生徒一人一人の覚悟と地道な日々の努力が求められます。そのことはこの場にいる全員が、よく理解しています。
振り返ってみれば、卒業生のみなさんが過ごした高校生活の前半は、新型コロナウイルス感染症の拡大による、世界中の混乱と戦いの日々を抜きに語ることはできません。学校現場も例外ではなく、様々な行事や授業が中止や変更を余儀なくされた時もありました。そして教育環境は大きく変わりました。
すべての教室にプロジェクターが設置され、毎日・毎時間のように授業で活用されております。生徒の皆さんに一人1台のタブレット端末が配付され、活用する授業もずいぶん増えました。Google Classroomを用いた提出物の回収、オンラインによる講演会、生徒生活体験発表会もありました。数年前まで誰も体験したことのない全く新しい取組が次々と行われました。
しかし、本校の先生方が目指した教育は、単にツールを使いこなすだけが目的ではありませんでした。ICTを用いて、自分の頭で考えることができる人を育てる。生徒の皆さんが自発的に他者と協力しながら新しいものを発見したり、作り上げたりする。これが浦和一女の先生方が目指した授業であり、教育でありました。
卒業生の皆さんはそんな教職員の思いをしっかりと受け止め、他者への思いやりを忘れず、相手の立場に立って考え、より良いものを求めて学校生活に取組んでくれました。限られた条件の中で知恵を出し合い、協力し合って最大限のパフォーマンスを発揮しました。
皆さんの高校生活の後半は、アフターコロナの世界を見据え、新入生歓迎会、体育祭、文化祭、予餞会といった大きな学校行事を一つ一つ入念に準備し、十分にコロナ対策をしたうえで、皆さんが安全に参加し、持てる力を大いに発揮することのできる行事として実施してきました。
このような創意工夫する姿、そして困難にも立ち向かい、やり遂げる姿、それこそが、皆さんの今の姿であり、これからの財産になっていくものです。これからの人生で、苦しいときや辛いときは、母校浦和一女のことを思い出して頑張ってほしいと思います。
さて、従来から、二十一世紀は知識・情報・技術をめぐる変化の早さが加速度的となり、情報技術の飛躍的な進化等を背景として、経済や文化など社会のあらゆる分野のつながりが、国境や地域を越えて複雑に影響し合う、予測が困難な時代だと言われてきました。
過去のデータの蓄積と計算スピードに基づくAI技術は、未知の事態に対する時、必ずしも明確な答えを導いてくれるとはかぎらないのだ、ということを私たちは知っています。
新たな価値を創造することはAIにはできない。それならばこのコロナ禍を乗り越えた私たちは、人間にしかできない新たな価値の創造をする力を鍛え、不断の努力をしていく必要があるでしょう。
皆さんが持つ人間ならではの感性があって初めて、情報技術は社会や人生、生活をより豊かなものにしたり、新しい未来の姿を実現したりすることが可能になるのだと思います。
皆さんは本日学校を巣立ち、やがて社会人となるわけですが、高校卒業後の人生は、決して平坦ではなく、いくつもの山や谷を越えてゆくことになるでしょう。卒業生のみなさん、変化の時代を恐れることなく、相手を思いやる心や互いに協力して困難に挑戦するチャレンジ精神など、本校で育んだ人間性をさらに磨き、しっかりと前を見据えて力強く歩んでください。
皆さんが、くじけることなく、自分の夢を追い求め実現し、「望みはわきてかぎりなく わが胸にあふる」の本校校歌そのままに、明るい社会を築いてくれることを、心から期待しています。
結びに、卒業生の皆さんの前途に幸多からんことをお祈りして式辞といたします。
令和7年3月14日
埼玉県立浦和第一女子高等学校長 佐藤 成美